大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)3208号 決定 1951年5月25日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人の上告趣意について。

所論は畢竟事実誤認の主張であるから上告適法の理由にならない。

弁護人平松勇の上告趣意第一点について。

しかし第一審判決に所論のような理由不備の違法があることは控訴趣意書にも記載せられず、また原審の判断を受けたものではないのであるから、所論は結局上告適法の理由に当らない。

同第二点について。

原審第一公判調書によれば弁護人は控訴趣意書に基いて弁論し、証人岡崎昌雄、森田明良の各取調を請求し右証人により被告人に犯意がなかった事実を主張する。第一審の弁論終結前に取調を請求出来なかったのはその後右証人が供述を翻しているためである旨述べたとありそして右取調請求が却下されたことは所論のとおりである。しかし第一審において被告人は右証人の供述調書を証拠とすることに同意し反対訊問権を抛棄しているのであるから、明らかに右証人の取調請求ができたのにかかわらずその権利を抛棄したものである。従って右証人申請は刑訴三九三条一項但書にあたらないと解すべきであるから、原審が右申請を却下したからといって何等違法の点なく所論は結局訴訟手続違背及び事実誤認の主張で上告適法の理由に当らない。

なお本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により主文のとおり決定する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例